2019/06/27

依存症治療に認知行動療法を?|当事者の「生きやすさ」への道しるべ

認知行動療法

「依存症になって苦しくて...。認知行動療法が有効って聞いたけど本当でしょうか?」

 

「認知行動療法を勧められたんだけど、なんだか私には敷居が高くって...。」

 

認知行動療法とは、心理療法の1つで依存症やうつ病等の精神疾患への有効な治療法として知られています。

 

近年では、医師のもとで認知行動療法を受けることで、保険点数に加算される可能性もあり、非常に注目されている治療法でもあります。

 

この記事では、認知行動療法について、そして依存症治療において認知行動療法がどのように使われているのかご紹介していきます。

 

目次

 

1. 認知行動療法について|思考のくせと生きづらさ

最初に、認知行動療法についてご説明していきます。

 

認知行動療法とは「 認知に働きかけて、心のストレスを軽くしていく心理療法の1つ」のことです。

 

認知とは「現実の受け取り方」や「ものの見方」、「考え方のくせ」を指します。

 

「生きづらさ」を抱えている人、精神疾患等を抱えている人は、「過度に自分を責めてしまう」場合があり、自己肯定感が低い方もいらっしゃいます。

 

認知行動療法を受けることは、ご自身の「考え方のくせ」に気づく第一歩になります。

 

もしそこに「苦しみ」や「生きづらさ」の原因があれば改善し、少しでも「生きやすく」なるように進めていくのが認知行動療法の特徴です。

 

ここからは具体的に例を挙げながら説明していきます。

 

これは私が最近経験したある出来事をもとにしています。

 

知人に「明日の夜に電話するね」と前日の夜にラインで約束をしました。しかし、夜になって彼に電話しても、いくらかけても電話に出ませんでした。

 

この出来事の際に、以下のように考える人もいるのではないでしょうか?

 

・「約束したのに、なんで電話に出ないの?」と不安に思い、何度も電話をかける

 

・「何かトラブルがあったのかな?」と心配になり、彼と親しい友人に彼の安否確認をする

 

・「今は都合が悪かったのかな?」と思い、あきらめて寝てしまう、あるいは別の行動をする

 

・「自分は嫌われてしまったのかな?」と不安になり、何も手がつかなくなる

 

・「私の電話に出ないなんて、彼はすっごく損してるわ。私はほとんど電話しないのに...。」と怒ってしまい、今後彼に電話をしない

 

このような出来事に対するその人の「考え方」によって、その後の感情や行動は影響を受けます。

 

こうした「考え方」や「認知の癖」に気づき、適応的に生きられるように認知を修正していくことが認知行動療法では行われます。

 

2. 認知行動療法と依存症治療

認知行動療法

 

認知行動療法は主に2つの文脈で使われているようです。順に説明していきます。

 

①依存行動や依存対象との接触・行動を減らすために認知行動療法を行う。

 認知行動療法を行うことで、依存物質との接触や依存対象への行動が誘発されそうな引き金を減らす効果があります。

 

認知行動療法には、「刺激となるもの(きっかけとなるもの、出来事、感情)」によって「行動」し「結果(不快な感情・快刺激)」となるという枠組みがあります。

 

例えば、ギャンブル依存症Aさんのギャンブル行動を例にとって考えてみましょう。

 

Aさんが外出をした際、度々やめなきゃと思いつつもギャンブルをしてしまうケースがあります。「外出の帰りに、自宅近くのパチンコ店から音楽が聞こえてくる」というのは「刺激(・きっかけ)」になります。

 

その刺激が当人の「パチンコをやりたい」という気持ちを誘発してしまい、「パチンコをしてしまいます。」これが「行動」になります。

 

「パチンコをした結果、外出の際に人に見られるという不快なストレスから一次的に解放された」しましょう。

 

この場合、パチンコをしたことが1種のストレス発散という快刺激になっている可能性があります。これは結果となります。

 

このようなケースの際、「パチンコ店の近くで店から音楽が聞こえてくる」という状況を少しでも緩和することが重要です。

 

具体的には、音楽が聞こえないように、当事者が好きな音楽を音楽プレーヤー等で聞きながら帰宅し、「パチンコ店の音楽が聞こえる」というような状況がなくなるようにするなどです。

 

また、Aさんはパチンコによって快刺激を感じていたため、それ以外の代替物で快刺激を得られるように、彼の今までの話に耳を傾け、パチンコ以外のストレス発散法を見つけることも重要です。

 

②ある出来事に対する「考え方のくせ」を修正するために認知行動療法を行う。

依存症等の精神障害をお持ちの方の中には「極端に完璧主義」「0か100かの思考」といった考え方の癖があります。

 

こうした癖を解消することで、依存行動の治療に繋げようとする際、認知行動療法が使用されます

    

先ほどと同じくギャンブル依存症のAさんを例にとって考えてみましょう。

    

1つ前の項目と同じように、「外出の帰りに、自宅近くのパチンコ店から音楽が聞こえてくる」という音刺激がAさんを襲います。

 

その後、Aさんは「今日は勝てる気がする」と「考えてしまう『考えのくせ』」があります。

 

そのため、その考え方のくせを「勝てる気がするかもしれないけど、パチンコはそもそも確率論だから、勝てるっていう根拠はない」というように認知を変えていく必要があります。

    

しかし、「考え方のくせを変える」というだけでは、依存症当事者は「考え方を否定された」、さらには「自分を否定された」と捉えてしまう可能性もあります。

 

治療の際には「出来事に対する考え方のくせ」というのは誰しもが持っているもので、それを依存症当事者自身が理解していくことが大切です。

 

支援者は、当事者が自身の考え方のくせに気づいていけるよう、サポートしていきます。

 

治療を継続することで、即座に行動を起こしてしまうケースも少しずつ減っていくでしょう。

 

3. まとめ

今回は依存症治療で有効な治療法の1つである認知行動療法についてご紹介しました。

 

最後に今回の内容を簡単にまとめてみます。

 

  • ①認知行動療法は、「認知に働きかけて、心のストレスを軽くしていく心理療法の1つ」です。

  • ②認知行動療法によって、刺激となるものから依存症当事者が距離を取れる可能性があります。

  • ③認知行動療法を通して、出来事への考え方のくせを修正できるかもしれません。

 

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参考:

・熊野宏昭, 村瀬嘉代子(2013) 臨床心理学 第13巻 第2号

・野村和孝『こころの科学205号 (2019年5月号) 行動のアディクション ―「ハマる」を考える』(2019)日本評論社

・宮川朋大, 真栄里仁, 米田順一, 赤石怜, 横山顕, 澤山透 , 樋口進(2007) アルコール依存症治療における認知行動療法の応用 Psychiatria et neurologia Japonica 109(6), 555-559

・下山晴彦『よくわかる臨床心理学』[改訂新版](2009) ミネルヴァ書房

 

ライター名: 木原彩